創栄図書印刷株式会社 | 新入社員が行く! 春の工場見学━連載コラム全3回━【第3回 検査室編】

新入社員が行く! 春の工場見学━連載コラム全3回━【第3回 検査室編】

2022/06/27

  • 吉祥院工場
  • オフセット印刷

刷版・印刷を経て、印刷物は「検査室」にたどり着きます。

印刷物にリアルタイムで目を通し、汚れやキズが無いかを確認する業務です。ただ、汚れやキズといっても、印刷時に発生するものだけでなく、紙本来のもの、印刷データ内のものなど、要因は様々。

これらをどのように区別し、発見しているのでしょうか?
美しい印刷物が出来上がるまであと少し。検査業務を一緒にみていきましょう!

検査業務について

Q&A

Q 検査業務とはどんなお仕事ですか?

A 印刷物に異常が無いかを検査する仕事。
・リアルタイムで刷出し(※1)と抜取り(※2)を検査

・刷取(※3)の検査【2通り】

① 検版ソフトによる面付データとの照合検査
組版データを実際に印刷するために、複数ページを1枚の用紙に配置したものが面付データ。検版ソフトを用いて、ディスプレイ上で印刷物と面付データを照合する。こちらで異常があれば、実際の印刷物の目視検査を行う。
② 印刷完了後の刷取を目視検査:本に近い状態での検査を行うため、刷取を作成し、全ページを確認。

※1 すり:刷り始めの印刷物。色味、汚れやキズの確認を行います。
※2 ぬき:抜取り検査。一定枚数毎に印刷物を抜取り、不具合が無いかを確認する検査です。もしも汚れなどがあった場合、その前後の印刷物にも影響が出ている可能性があるため、印刷と並行して抜取り検査を行います。異常があれば即時に印刷課に伝えて対応できるため、いかに検査で早く気付けるかが重要です。
※3 すりとり:印刷物を折る→断裁。本に近い状態の印刷物です。(写真参照)


検版ソフトを使って印刷前後でデータを見比べている様子。差異がある範囲に反応します。


検版ソフトが反応した箇所を目視確認する様子。最終的には人の目で確認を行います。


印刷完了後に作る「刷取」。本に近い状態で検査していきます。

Q 創栄図書印刷・吉祥院工場の特色や強みを教えてください。

A 品質。印刷物が綺麗であること(=印刷によるゴミが少ないこと)。

Q 担当業務で工夫や集中が必要なことは何ですか?

A 注意力を保つこと。多くの印刷物を検査するからこそ、目を走らせないよう意識(※)している。「必ず何かがある」ことを前提として、常に疑いの目を向けて「見る」ことが重要。

※ 印刷物の汚れとは、一目で簡単に見つかるものばかりではありません。小さな文字の上に、さらに小さなキズやごみが現れる可能性もあります。スピードも勿論必要ですが、ただ流れ作業のように視線を滑らせて「見たつもり」になるのではなく、一つひとつの文字やパーツに注目し、丁寧に確認していくことが検査での重要なポイントです。

Q 仕事をしていない時でも、つい出てしまう癖や習慣はありますか?

A いつも解いているパズルの本に、印刷ゴミ(※)を見つけてしまうこと。読んでいる本にピンフォールなどを見つけると少し嬉しくなる…かも。

※代表的な印刷ゴミ
・ピンフォール:印刷機内や版面に付着したゴミが原因となって出来る、ドーナツ状の斑点。発生頻度が高い印刷汚れの一つです。
・ヒッキー:小さな白点。針で突いたように見えることに由来します。

Q やりがい、達成感、ステップアップを感じる瞬間を教えてください。

A 元より紙ゴミが多く、検査しづらい用紙(※1)において、確信を持って酸化汚れ(※2)を判別できた時。「紙=白く綺麗なもの」という印象があるが、実際には紙本来の繊維ゴミなども混ざっているため、注意して見分けることが重要。

※1 例えば「ハイランド」は、上質紙とざら紙(新聞紙など)の中間にあたる「中質紙」の代表銘柄です。学習参考書や雑誌などに用いられますが、原料に古紙パルプを含むため、印刷前の状態で既に繊維ゴミが見られます。その用紙本来のものなのか、印刷工程において付着した汚れなのかを判別するのが、検査室での重要な役割の一つです
※2 印刷汚れの一つ。様々な要因からなり、文字や図版の無い非画線部に現れます。

以下でもう少し詳しく確認してみましょう。

もう少し詳しく! 酸化汚れとは?

酸化汚れとは、非画線部に現れる小さな斑点状の汚れです。
印刷開始直後や、中断後に再開するタイミングで現れることから、「ストップ汚れ」とも呼ばれます。
(原因の特定は容易ではありませんが、例えば以下に問題がないかを確認する必要があります。)

・印刷機の給水ローラー
非画線部を湿らせるための水を運ぶ給水ローラーに、インキが絡んで問題を起こしていないかを確認します(本来、非画線部は油分であるインキをはじくための水が供給されるため、インキはのらず、常に湿っています)。
・外気侵入による環境の変化
外気が入ることにより、工場内の環境(温度・湿度など)が不安定となります。特に夏場は酸化反応のスピードが上がるために注意が必要です(加湿器やエアコンから吹き出す風が、非画線部の保護膜を破壊する可能性もあります)。
・版面を保護するガムの粘度
ガムとは、水溶性の樹脂を含む保護剤のことです。酸化を抑える性質を持つため、版面に塗布して非画線部の汚れを防ぎます。このガムの粘度が正常かを確認します。

印刷工程での汚れを発見し、正しく判別・検査を行うためには、様々な原因が関係していることを知る必要があります。
「見極めが困難な汚れだからこそ、確実に発見できた時にはやりがいを感じられる」
との言葉が印象的でした。

ただ「見る」だけではない、幅広い印刷知識が求められる検査業務。
次は、そんな業務に欠かせない仕事道具たちをご紹介します。

ここに注目! 仕事道具紹介


キズや汚れが無いかを確認するルーペ。様々なルーペを使う中で、100円均一ショップのこちらのルーペが一番使いやすいとの結論に至ったそう。ルーペはオペレータによって使い勝手の良いようにカスタマイズされていたりと、工場内でも個性が表れていました。


必需品の指サックは、見た目の可愛いさもさることながら、使い勝手も抜群のハニワ型!

加えて最近は、印刷物への汚れを防ぐために「ノビサック」(スマートフォンも操作できるほどの薄い指サック)も使われているそうです。仕事中は手の乾燥が気になっても、汚れの原因となるハンドクリームなどは使えません…。身に付けるもの一つひとつにこだわりが感じられますね。

おわりに

お客様から受け取った原稿が、正しい組版ルールに則ったデータとなり、工場で印刷されます。

書籍や雑誌は私たちの身の周りにある当たり前の存在で、記憶に残るのはタイトルや作者、そして中身でしょう。本を通じて共感したり、知識を得たり、笑顔になる読書経験をお持ちの方も多いはずです。

読み手と印刷物との間に何も妨げるものがなく、純粋に内容に集中できること。これこそが印刷物の品質が支えているものの一つなのではないかと、改めて感じた取材となりました。
印刷物に対して「何か異常があるのではないか?」と、疑いの目を向けて行う検査業務の根底には、正しく良いものを作り届けたいという想いがあります。
不要なキズや汚れが無く、綺麗に印刷されていること。高い品質を作り、守り続けることで信頼関係を築くこと。
検査業務の内容は勿論のこと、その重要性を改めて知ることができました。

取材を終えて

まずは、ここまでお読み頂き誠にありがとうございます。

今回の取材では印刷に携わる方のお仕事に関する基礎的なお話から少しディープな小話まで記事にさせて頂きました、この記事で創栄図書印刷の工場ってどんなところ? どんな仕事をしているの? といった普段見えにくい現場の様子がイメージしやすいものになれば嬉しく思います。

又、取材した私たちにとっても商品がどのような流れで出来上がっていくのか、どのようにお客様にご満足いただける品質を保っているのか、それを知る事、身近に感じることは自身の仕事のやりがいや成長にもつながりました。

皆様も普段なにげなく書籍を手にとって読まれているかと思います。
忘れがちですが、その裏ではもちろん印刷会社だけでなく沢山の方の仕事の上に出来上がっています。
この記事を通して創栄図書印刷の様子だけではなく、印刷の仕事や本作りについても少しでも身近に感じて頂ければ幸いです。